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あとがき
SS書くとき、自分の体験している季節感を織り込みつつ、感覚的な表現をしようとしている気がします。なのでとても長い。
今回は急に冬がきちゃったみたいな寒さが続いた後、台風21号が来やがりまして、その寒ーい雨のなかの二人を描写したくなりました。
公瑾さんは公私の区別が明確な人なのではないかなあとイメージしています。都督の立場としては、敵もできるだけ殺さないという選択はやっぱり難しいものがあると思います。
だからもしかしたら、花ちゃんと策の話をしたくないのかも。意見が割れちゃうと厳しくしてしまうから。そして、ひっそりと後悔して、嫌われてないか悶々とするんですよ。
・・・くっ・・・萌える。
そして、今回は癒しの子敬さんを登場させられたので満足しています。なんと気の利く同僚。きっと二人の子が早く見たいんだろう。
仲謀さんはまだ攻略してないから、どう動くか想像できず、登場できない・・・。先に仲謀さんに進もうっと。


追記
改行がなんだかうまくいかなくて、改行しすぎか詰まる感じになってしまいます。随時修正中。

この後日譚を書きたいんですけど、天才軍師聴きはじめたら全然進みません(笑)


追記
後日譚というか、書いているうちに、壱が花ちゃん視点、弐が公瑾さん視点になりました。

金木犀はモイストポプリで香りを楽しむことができます。
公瑾さんは本編でお香を焚きしめたハンカチを使っている描写があったのでこれもいけるかなあと思いました。
うっかりすると年齢制限的な描写のスイッチが入りそうになるのをこらえるの、大変でした。公瑾さんは声が艶っぽいというのがあり、私の中ではいまのところ最も大人テイストの登場人物という位置づけに…。(孟徳軍と師匠と雲長さんがこのあと控えておりますが)
なんのことかわかるお嬢様にはわかるという描写をがんばってみました。

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 夏が過ぎ去って、日が暮れるのが早くなった。
 夜になって自分の時間ができると、公瑾さんは琵琶を弾く。

 公瑾さんは”ちょっとした小競り合いですよ”と言っていたけれど、このところ戦が続いていて気が抜けなかった。軍議は深夜までかかることもしばしばで、遅くに部屋に行くのも気が引けて、二人でゆっくり会えないまま数日が経っていた。

 琵琶の音色が聞こえる。
 公瑾さんの凛としたたたずまいのような、澄んだ音色。

 廊下に出て、音のする方を眺める。ひんやりした夜風に乗って、音が届く。

(ここで聴いてよう)

 膝を抱えて座り込んで音色を追う。

(次に会ったら、公瑾さんは何の話をするのかな。策のことかな)
 
 策について議論するとき、あたりまえだけど公瑾さんは二人でいるときの甘さなど微塵も滲ませない。勝ちに行くための策を冷徹に選別する。時には意見が衝突する。それは、公瑾さんが都督という立場で戦況を有利にすることが至上の目的で、敵味方ともに犠牲を少なくしたい私の考えとは方向が同じではないからだ。

 衝突するのは私のことを認めて尊重しているからだとわかっている。認めてなければそもそも意見など聞かない。

 でも、この前意見が割れた後から、二人で過ごしていない。

 今日の音色は切なくて、公瑾さんが恋しくなってしまった。


(逢いたいなあ……。でも、公瑾さんの琵琶をじゃましたくないし……)


 次の曲が始まった頃、渡り廊下の向こうから子敬さんがやってきた。

「ふぉふぉふぉ、花殿、こんなところに座り込んでいては、風邪をひいてしまいますぞ」

「こんばんは、子敬さん」

「はて、琵琶の音色にでも誘われましたかな」

「はい、このところ公瑾さんも忙しそうですし、せっかく琵琶を弾いているところだから、聴いてようかと…」

「ふぉふぉふぉ、何を遠慮されることがあろうか、お二人は皆も知っている仲ではないですか。公瑾殿も、こんな冷たい風のなかで音色を追いかける可愛らしい人に会わないでいるとはどうしたことか。花殿、ついてこられるがよい」

 子敬さんは、先に立って公瑾さんの方に歩いていく。
 公瑾さんに会うのはちょっと気まずいような、でも、子敬さんがとりもってくれて助かるような…。

 公瑾さんに子敬さんの足音が聞こえるくらいに近づくと、公瑾さんはこちらを見て目を伏せて琵琶を置いてしまった。


 やっぱり気まずい。

 そんな雰囲気を気にせず子敬さんが空を見上げる。

「ふむ……雲の流れが速いですなあ。公瑾殿には、河口に近い砦の補強の様子を視察に行っていただかないと、水嵩が増したときが気がかりですな」

 公瑾さんは空を見上げて、子敬さんの言ったことを考えているようだった。

「確かに…これは水嵩を気にするような雲の流れではありますが…。視察は今、私でなくとも……孟徳軍に動きがあるかもしれませんし…」

 ちょっと不思議そう。こんなに意味が呑み込めていない感じの公瑾さんは初めて見る。といっても私もよくわかっていないけど。

「なに、動きがあろうと、この雲行きではどうにもならぬであろうよ。花殿にも砦の様子を見せて差し上げると、今後、水軍のこともお考えに入れていただくのによいのではないかな。恋人を想う曲などを奏でているくらいならば……」

「なっ……子敬どのっ…」

 公瑾さんの頬がさっと赤みを帯びて、狼狽える。
 恋人を想う曲って私のこと想って弾いてくれてたのかな。だとしたら、すごく、うれしい。

「ふぉふぉふぉ、後はお任せいただいて、お二人は荒れる前に出立されるとよかろう。ではの、ふぉふぉふぉ」

 子敬さんが去っていくと、顔を真っ赤にした公瑾さんが近づいてきて、私の手をとった。
 ため息を一つついて、手の甲に唇を寄せる。
 さらさらの前髪の陰の目元が艶を帯びていて、どきどきする。


「全く…子敬にばらされるとは思いませんでした。
 ……ということなので、行きますよ」

 言うが早いか、ぐいぐいと手を引いて歩いていく。
 照れ隠しなのか、耳が赤い。

「…って、ばらされるって何のことかちゃんと言ってください。あと、”ということ”って何ですか、公瑾さ…」

 公瑾さんの部屋に入ると、すぐに唇を塞がれた。

「…ん……っ」

 息もできないような口づけ。

「私がこれ程あなたを求めていることです…」

そう囁いて、名残惜しそうに軽く唇を重ねる。

「あなたの唇は甘くて……これ以上重ねていると我慢できなくなります。”ということ”は道中で説明します」
 
 長袖と数日分の小さな荷物と刀を手際よく用意して、私には公瑾さんの上着を肩から掛けてくれた。
 暖かくて公瑾さんの匂いがして包まれているみたい。
 大きくて引きずりそうだなあと思ってると、ふわりと脚が浮いた。両腕に抱き上げられている。

 「しっかり掴まっていていてくださいね」 

 よくわからないまま、公瑾さんの愛馬に乗せられ、夜の京城の街を抜けて駆けていく。
 横座りで馬に揺られるのは不安定で、公瑾さんの首に腕を回して抱きついている格好になる。

「大丈夫ですよ、あなたを落としたりしません」

 綺麗な笑顔がすぐ近くにある。
 さっきの口づけを思い出してしまってどきどきする。怖いふりをしてぎゅっとしがみついた。

 街の明かりがなくなるころ、馬の速度が少し緩んだ。

「”ということ”の答えは空にあります」

「さっき雲が速いって言ってたことですか?」

「そうです。今なら目印の星もよく見える。北はわかりますか」

「あの柄杓の先の…あのへん?」

 北を確認してから、公瑾さんが質問で答えに誘導する。どうやら、台風が近づいているときの雲行きということのようだった。夏の暑さからすると、京城は日本と同じか少し南かもしれない。つまり、台風の威力もきっと強力だ。
 子敬さんが言っていたのは、視察というのは名目で、台風では両軍ともどうにも動きようがないから、二人で出かけて休暇をとりなさい、ということのようだった。

 私が察しのよい答えをすると、公瑾さんは目を細めて髪に唇を寄せる。
 数日会えない間に気持ちがすれ違ってあれほどさびしかったのが嘘のように甘い。

 ぽつぽつ、と雨が降り始めた頃、小さな別荘に着いた。窓を開けて空気を入れ替えると庭木から甘い匂いがした。

「いい香り」

 公瑾さんは、私には届かない高いところの、花がたくさんついた枝を一挿し手折って掌に乗せてくれた。
 枝に身を寄せ合うようにいっぱい咲いている小さな花がとてもかわいい。
 金木犀に似てるけれど香りはもっと柔らかで、花は白かった。
 
「桂花ですね。私の好きな香りです。あなたによく似合う。
 ……あなたの聡いところも、優しいところも、目を離すとどうなるかわからない危うげなところも、愛しています」

 掌にあった小枝を私の耳にかけて、公瑾さんが、優しく私を抱きしめる。

「私は孫家の国を実現することになると、策においては冷静さを保とうとしていますが、気持ちは逸ってしまう。だから、あなたと考えが違うときについ言いすぎてしまう」

 髪に、額に、瞼に、柔らかな唇が落とされる。

「そのくせ、嫌われてしまったのではないか、私よりあなたにふさわしい男がいるのではないか、という思いにとらわれて、素直にあなたに声をかけることができなかった。
 ……挙句に、恋の歌を歌っているような男です」

 雨が降るように唇が何度も重ねられる。

「愛しています……花」

 公瑾さんはずるい。厳しい顔もするのに、二人の時はこんなに深く愛を囁く。それでも…。

「公瑾さん……私が愛しているのは公瑾さんしかいません」

 この一見冷たいような整った顔の奥にある艶めいた熱を知っているから。
 その瞳から目を離せないから。私が想いを伝えると、抱きしめる腕の力が強くなった。

「雨と風に閉じ込められている間は誰の目にも触れさせず、あなたを私だけのものにしておける。
 ……嵐が止まなければいい」


 柔らかな桂花の香りが雨を纏って私たちを包んでいた。













― 弐 ― へ


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公瑾さんのレビューにぽちっと拍手をくださった方、ありがとうございました。

また見に来てくれるか、SSはお嫌いでないか気になるところですが、反応があったことで公瑾さんのことをあれこれ考えました。


公瑾さんの背景を思い描いていたら、従姉夫婦が話の冒頭に登場。なんだこの妄想力(笑)。しかも文章がいかつくなってしまった。お許しを。

あくまで私の想像する公瑾さんですが、自分の感情に気づくのが少し鈍いけれど、実はとても繊細で、感情を殺して冷徹にふるまう奥底には、大切な人への優しさや温かい思いが秘められている人物のように思うのです。

花ちゃんを警戒し、踏み込まれることを恐れながらも心惹かれて行った過程を補ってみたく、これができあがりました。


引用の漢詩は三国時代より前の漢詩を調べていたらみつけました。この話にとてもしっくりと馴染みます。心よりの感謝と敬意をもってリンクさせていただきました。

公瑾さんは、キャラが立っているので補い甲斐があっていいですね・・・。作ってる途中で別のネタも浮かんできました。

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 「―――――――――公瑾、いらっしゃい、琵琶の調律を教えてあげるわ」
 「おお、そろそろ稽古も一休みにしよう、行って来い、公瑾」
 それは懐かしい笑顔。幼いころよく遊びに行った従姉の夫婦。
 懐かしい夢を見た。
 
 目を開けると見慣れた自室が蒼い闇に沈んでいた。
 隣には花がいる。

 軍事官僚の家系に生まれた私は、幼いころから武術を鍛えられた。いずれ戦場に赴くのは元服するのと同じように当然のことと思っていた。裕福な家だったから空いた時間は自由に使えた。琵琶を覚えたのはこの頃だ。

 従姉の夫君は今にして思うと隠密のような仕事をしていたのかもしれない。よく遊びにいって、夫君から体術の稽古をつけてもらい、従姉から琵琶を習った。夫君が戦に出たときの従姉の琵琶の音色は寂しげで、夫君がいるときには暖かな音色だった。

 大きな戦があってから、従姉の琵琶は暖かな音色に戻ることはなかった。

 想いは音に出ると知った。


 しかし、それと戦場はまだ幼い私には結びついていなかった。
 その冬、従姉は風邪がもとであっけなく逝ってしまった。
 親戚は若い二人の死を悲しんだあと、しばらくすると日常に戻っていった。

 それほど、死は身近だったにもかかわらず、実感として感じられることはなかった。
 ただ、あの暖かな笑顔に会えなくなったことは寂しかった。

 武術もほどほどにできたが、本当は楽を奏でることのほうが好きだったのかもしれない。雨夜には従姉の教えてくれた曲を爪弾いた。

 ほどなく、私も初陣を迎えた。

 刀ごしの肉を抉る感触と怨嗟の声に怯え、血の臭いにえづいた。殺られれば、自分もこの肉塊と同じようになり、いずれ忘れ去られ、全て潰える。斃れた兵士のなかに従姉の夫君がいるような気がした。

 震えは止まらず、いつまでも血の臭いが鼻の奥に残った。

 ――――何のために、血を流す。
 
 ――――何のために。


 戦から帰ると、私は兵法書を読み漁った。

 大切なものを護るには、強く賢くなければ生き残れない。それが現実だと知ったからだ。
 星を読み、地の利を活かすことも策には有効だった。寝る間を惜しみ、ただひたすらに知識を詰め込んだ。

 いつか、戦がなくなり、死を悲しむ人が減ると良いのに、と願ったこともある。

 それは花と同じだった。あれほどまでに花に苛立ち、試すようなことをしていたのは、どんなにそれを願っても、乱世には叶わないと諦めた自分を肯定したかったからかもしれない。

 私は感情を封印し粛々と家名に恥じぬ程度の戦果を挙げていた。
 伯符に出会ったのはそんな頃だった。
 陽のような伯符と共に国をつくるという夢は私を強くした。

 
 その伯符も私を残して逝ってしまった。

 私も矢傷を受けて生死を彷徨った。

 この国では死はすぐ傍にある。

 戦などない国から来た花は、私がいなくなったら悲しむだろうか。

 無鉄砲な花は危ないことに巻き込まれて私を置いて逝かないだろうか。

 左腕に花の重みと体温があることを意識して安堵する。

 なのに、息をしているか、確かめたくて顔を寄せ、起こさないように唇を重ねる。
 一度では止まず、もう一度。

 「ん・・・公瑾さん・・・」

 寝ぼけて花が頬を寄せてくる。

 ぎゅっと抱き寄せて、花の背中を子供を寝かしつけるように掌でそっと叩く。

 ゆっくりとした拍に合わせて心の中で詠う。

 結髮爲夫妻 恩愛兩不疑
 歡娯在今夕 燕婉及良時
 征夫懷往路 起視夜何其
 參辰皆已沒 去去從此辭
 行役在戰場 相見未有期
 握手一長歎 涙爲生別滋
 努力愛春華 莫忘歡樂時
 生當復來歸 死當長相思
  ”――――――――――気をつけて若い身空を大事にし、私とともに過ごした楽しい時間を忘れないで欲しい、生きておられればまた帰って来れる日もあろう、若し死に別れても、末長く思い会おう”

 先の武人の残した妻との別れを詠った詩だった。

「・・・大丈夫ですよ、公瑾さん・・・・」

いつのまにか声に出ていたのかとはっとする。

花はむにゃむにゃいって、すぅ・・・と寝息をたてた。
私の腕のなかで、安らいだ幼子のように。

声には出ていなかったのに、花には伝わったのだろうか。

花はわかっていて「大丈夫」と言ったのか。
寝言でそう言っただけか。

ただ、その一言で私を縛っていた何かが解けた。

私の冷徹な貌の奥に潜む恐れをいとも簡単にこの娘が氷解させる。
あれほど独りであがいたものを。

それが不愉快で、たまらなく愛おしかった。

花は、この蒼い時間に、こんな想いをこめて額に口づけられているのは知らないだろう。
私の方がこれほど深く愛している。

この蒼さよりも深く、深く。









 
 
引用詩:蘇武 妻との別れ http://chinese.hix05.com/Han/han07.sobu.html
壺齋散人(引地博信)様 漢詩と中国文化 http://chinese.hix05.com/Han/han.index.html
日本語対訳がありますので是非ご参照ください。




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三国恋戦記を始めて、めちゃくちゃ更新頻度が上がっています。こんばんは。三国恋戦記、今は次回作も発売されてるとか。そっちはどうなんでしょうね。

それにしてもほんとに積んでた私を殴りに行きたいです。盛り上がってる時にサイト巡りしてたらさぞ楽しかっただろうな…。

blogは音楽流しながら書いてます。馴染みのあるのは『そよ風』ですね。一番好きなのは『藍色』かな。ゲーム音楽の良いところはループが滑らかに作ってあるところで、文章書くときに没頭できるんですよね。なかなかリアルでは同志を見つけられないのですけど。

次は仲謀さんにするか、文若さんにするか…。確かにこの感じだと仲謀さんは後でも良いかもしれない。

ちょっと充電しながら小休憩します。

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