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帝都の冬は音もなく、満ちた月が蒼い翳を落とすばかりだった。

はるは弐階の窓辺から庭を見下ろした。

溶け残った雪と池の氷の静寂。
宮ノ杜の屋敷でさえ冬の夜更けは人の気配が密やかになる。

はるはふといま自分がいるのは氷の下の世界で、宮ノ杜での出来事は夢物語だったのではないかという思いにとらわれた。

「はる、こんなところいにたのか」

背後から勇の声がする。
振り向く前に背中からすっぽりと包まれる。

「風邪をひくぞ?」

冷え切ったはるの耳たぶに勇の頬が温かかった。

「…勇様は温かいですね」

「どうした?」

「いいえ、何も」

「そのような声ではあるまい。何を憂えている」

「…ふと、これは夢なんじゃないかって…」

「…夢、か。ならば夢でもよかろう」

「え?」

「俺は夢のなかで氷の下にいるお前と語らっているのだ」

「ふふっ、よくわかりません」

「支那の故事に、氷の上に立って氷の下の人と話したという夢をみた人がいて占ったところ氷上は陽、下は陰のをあらわし、陽と陰が語るのは仲人を頼まれるという前兆であったという故事がある。そこから仲人のことを月下氷人というのだ」

「それでは勇様が仲人になりますよ?」

「む、そうだな。細かいことはいい、俺は氷の上から氷の下にるお前と語らうのだ。俺の対となるのは、はる、おまえしかいない。お前といると俺はいままでになかった俺を知る」

勇ははるを向き直らせ冷たい指先をとる。


「はる、ともに永遠の夢をみよう。そして俺の傍にいてくれ」


勇の唇から言葉が紡がれるたびに白い息が夜に溶ける。

指先からつたわる温もり。

こぼれた黒髪の間からはるを見つめる怜悧な目元。

他では見ることのない勇様のやさしいまなざし。



「……はい」

はるの返事も白い息となる。


夢ならば醒めずに。
現ならば、このままで。















1月27日 求婚の日




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