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今年は薮入りがあけても残暑が厳しかった。学校はまだ休みで、博と雅が屋敷のなかでは比較的涼しい別棟の部屋の窓を開け放ち、読書をしている。この二人が同じ部屋で我慢するくらいに暑いのだ。

 茂がいつものように日が高くなってからあくびをしながら起きてきた。

「ふぁ~…おはよう」

「おはようございます、茂様」

はるがすぐに冷たい麦茶を用意する。

「おはよう、茂兄さん」

「ふん、こんな時間までだらしないったら…」

 険のある言い方の雅に苦笑いをして、茂が懐から切符を取り出した。

「雅、そんなにつんけんしないでよ。いいものあげるからさ」

 雅は一瞥して、気のないそぶりで本に視線を戻す。茂が切符をひらひらさせる。

「あのさ、いまお化け屋敷がきてるんだよね。お客さんから切符もらったんだけど、俺は行かないからさ」

「別に僕はそういうの興味ないから。博が行けば?」

「あ!行く行く!この前学校のやつらに会ったとき、すっげえ怖かったって話題になったんだよ。はる吉もつれてっていい?」

「わわわ、私は使用人の分を超えておりますので、え、遠慮させていただきたく存じ上げます」

あわててはるが手を振りつつ辞退を表明する。声が裏返る。雅ははるのあわてっぷりを横目で見て、読んでいた本を膝に伏せる。

「ふぅん、珍しいじゃない、はるは見慣れないものに関心強いと思ってたんだけど?」

「ごほん、い、いぃえぇ、そんなことはないですよ、雅様。使用人としての立場がございますので…」

はるのひきつった笑顔に、それはもう、あでやかににっこりと、雅は冷ややかな微笑みを返す。

「命令。僕の荷物係でついてきて」

-弐- へ































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