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玄徳さんは相変わらず夜遅くまで執務をしていて最近あんまりゆっくり話せてない。
こおろぎの声が夜の庭に響く。
「どうしよう、お夜食でも作って持って行こうかな…そしたらちょっとお話できるかも」
廊下から部屋の様子を伺ってみる。
「あれ?いないのかな…?」
背伸びして覗き込んでいると突然背後からがしっと頭を掴まれる。
「きゃー!!」
心臓が飛び出るって古典的な表現だけど、このことだ!
「ははは!花は隙だらけだな」
玄徳さんが笑いながら頭をわしゃわしゃ撫でる。
「もー!玄徳さん!!背後から忍び寄るとかひどいじゃないですか!」
ぽかぽかと反撃するものの、玄徳さんには一向に堪えてる様子はないのが腹立たしい。
私のおでこに玄徳さんのおでこがこつんとぶつかって大きな手が私のぷうっと膨れた頬を包む。
「あまりにも無防備だったからつい。…こんな時間にどうした?」
優しい笑顔が目の前にある。なんだか照れくさくなって、思わず目を逸らしてしまう。
「別に、なんでも…」
「ちょうど切りのいいところだったんだ、少し歩かないか?」
「…はい!」
我ながら忠犬のよう。でも、好きな人と一緒にいられるのがうれしくて。今の私は満面の笑みになってるんだと思う。
「いい子だ」
私の額にそっと玄徳さんの唇が降りてきた。すぐに離れてしまったけど、暖かな手が私の背中に添えられて、促されて並んで歩く。丸く大きな月が空に冴えて、木に影ができるほど明るかった。
「玄徳さん、月にはうさぎがいるって言い伝え、聞いたことありますか?」
「ああ、不老不死の薬を作っているんだったか」
「私の国では餅をついてるって言います」
「似てるところも少し違うところもあるんだな。薬と餅なら花はどっちがいい?」
「んー…味次第かなぁ…」
「味で決めるのか!?」
「美味しいかどうかは重要です!」
他愛のない話をしながら、見晴らしのいいところまで来て、城下を眺めた。
多分、今日は日本だとお月見なんだと思う。
「月が冴えているな」
「多分、十五夜なんだと思います」
「十五夜?花の国ではそう呼ぶのか?」
「そうですね、秋の満月はすすきとお団子を供えて、月を愛でるんです」
「風流だな…。そんな風に全ての人々が心穏やかに暮らせるようにしたいな」
眩しそうに少し目を細めて月を見上げる玄徳さんは凛々しくて、胸がどきどきする。私は玄徳さんの横顔が好き。まっすぐに願うものを見つめる玄徳さんが好き。
「…そうですね、私もお手伝いしま…………
…っくしゅん」
風が通り過ぎると思いの外冷たくて、くしゃみが出てしまった。
「この時間は冷えるようになったな」
玄徳さんが背中から包み込むように私を抱きしめて耳元で囁く。
「花と出逢ってから月が何度巡っただろう。日を追うごとに花が愛おしい。これから先も…ずっと傍にいてくれ」
玄徳さんの唇が耳たぶに触れる。
「月の兎からは、お団子ではなくて、不老不死の薬を選んで永遠に共にいてほしいと、あの冗談の一瞬でさえ願ってしまうほどに……花、お前を愛している」
熱のこもった声が私を包み込む。私の想いとどっちが強いんだろう。
「はい…私も玄徳さんのこと、大好きです…」
そう答えるのが精一杯で。
でも、想いを伝えたくて、腕の中でくるりと向き直り、玄徳さんの瞳を見つめる。そこには私が映っている。子供たちを構っている時の瞳とも、理想を語る瞳とも、雄々しく戦う時の瞳とも違う、私といる時だけに見せる瞳。
「……玄徳さん…」
愛しています、と言葉にしたいのに、声にならない。背伸びをして玄徳さんの首に手を回しておでこをくっつける。
「……ずっと傍において下さいね」
そして、私から小鳥のように唇を重ねた。
玄徳さんは少しだけびっくりしたような顔をしてから、嬉しそうに私を見つめて囁く。
「花、愛している」
「玄徳さん、愛しています」
月明かりのなか、甘い口づけが降りてきた。
こおろぎの声が夜の庭に響く。
「どうしよう、お夜食でも作って持って行こうかな…そしたらちょっとお話できるかも」
廊下から部屋の様子を伺ってみる。
「あれ?いないのかな…?」
背伸びして覗き込んでいると突然背後からがしっと頭を掴まれる。
「きゃー!!」
心臓が飛び出るって古典的な表現だけど、このことだ!
「ははは!花は隙だらけだな」
玄徳さんが笑いながら頭をわしゃわしゃ撫でる。
「もー!玄徳さん!!背後から忍び寄るとかひどいじゃないですか!」
ぽかぽかと反撃するものの、玄徳さんには一向に堪えてる様子はないのが腹立たしい。
私のおでこに玄徳さんのおでこがこつんとぶつかって大きな手が私のぷうっと膨れた頬を包む。
「あまりにも無防備だったからつい。…こんな時間にどうした?」
優しい笑顔が目の前にある。なんだか照れくさくなって、思わず目を逸らしてしまう。
「別に、なんでも…」
「ちょうど切りのいいところだったんだ、少し歩かないか?」
「…はい!」
我ながら忠犬のよう。でも、好きな人と一緒にいられるのがうれしくて。今の私は満面の笑みになってるんだと思う。
「いい子だ」
私の額にそっと玄徳さんの唇が降りてきた。すぐに離れてしまったけど、暖かな手が私の背中に添えられて、促されて並んで歩く。丸く大きな月が空に冴えて、木に影ができるほど明るかった。
「玄徳さん、月にはうさぎがいるって言い伝え、聞いたことありますか?」
「ああ、不老不死の薬を作っているんだったか」
「私の国では餅をついてるって言います」
「似てるところも少し違うところもあるんだな。薬と餅なら花はどっちがいい?」
「んー…味次第かなぁ…」
「味で決めるのか!?」
「美味しいかどうかは重要です!」
他愛のない話をしながら、見晴らしのいいところまで来て、城下を眺めた。
多分、今日は日本だとお月見なんだと思う。
「月が冴えているな」
「多分、十五夜なんだと思います」
「十五夜?花の国ではそう呼ぶのか?」
「そうですね、秋の満月はすすきとお団子を供えて、月を愛でるんです」
「風流だな…。そんな風に全ての人々が心穏やかに暮らせるようにしたいな」
眩しそうに少し目を細めて月を見上げる玄徳さんは凛々しくて、胸がどきどきする。私は玄徳さんの横顔が好き。まっすぐに願うものを見つめる玄徳さんが好き。
「…そうですね、私もお手伝いしま…………
…っくしゅん」
風が通り過ぎると思いの外冷たくて、くしゃみが出てしまった。
「この時間は冷えるようになったな」
玄徳さんが背中から包み込むように私を抱きしめて耳元で囁く。
「花と出逢ってから月が何度巡っただろう。日を追うごとに花が愛おしい。これから先も…ずっと傍にいてくれ」
玄徳さんの唇が耳たぶに触れる。
「月の兎からは、お団子ではなくて、不老不死の薬を選んで永遠に共にいてほしいと、あの冗談の一瞬でさえ願ってしまうほどに……花、お前を愛している」
熱のこもった声が私を包み込む。私の想いとどっちが強いんだろう。
「はい…私も玄徳さんのこと、大好きです…」
そう答えるのが精一杯で。
でも、想いを伝えたくて、腕の中でくるりと向き直り、玄徳さんの瞳を見つめる。そこには私が映っている。子供たちを構っている時の瞳とも、理想を語る瞳とも、雄々しく戦う時の瞳とも違う、私といる時だけに見せる瞳。
「……玄徳さん…」
愛しています、と言葉にしたいのに、声にならない。背伸びをして玄徳さんの首に手を回しておでこをくっつける。
「……ずっと傍において下さいね」
そして、私から小鳥のように唇を重ねた。
玄徳さんは少しだけびっくりしたような顔をしてから、嬉しそうに私を見つめて囁く。
「花、愛している」
「玄徳さん、愛しています」
月明かりのなか、甘い口づけが降りてきた。
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